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田中彰治(助教) 分子研リポート2008 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究領域の現状 233

田 中 彰 治(助教) (1989 年 4 月 1 日着任)

A -1) 専門領域:非ベンゼン系芳香族化学,分子スケールエレクトロニクス

A -2) 研究課題:

a) 大型パイ共役分子内における単一荷電キャリアーの外的制御原理の探索 b) 各種基板表面における鎖状大型分子の合目的分子配列に関する研究

A -3) 研究活動の概略と主な成果

a) 「逐次精密合成法に基づく,単一電子トンネル回路素子の単一分子内集積化」について開拓研究を進めている。その 第一段階として,1nm 長級から 40nm 長級にわたる汎用鎖状分子構築ブロック群をこの10年間に開発した。この構 築ブロック群は,「位置選択的接合サイト」と「H U B 機能ユニット(これを基点として数ステップ以内に20種以上 の機能ユニットに変換可能)」を装備しており,その官能基変換と逐次接合により,1–100nm 長のパイ共役主鎖中の 任意の位置にポテンシャル井戸・障壁,光活性部,プロトン・金属配位部等を導入可能である。第二段階として,「基 板表面上の単一巨大分子内の単電子移動過程を律する根幹原理」を系統的に探索するため,上記の基本構築ブロッ ク群から様々な仕様の「基礎データ収集用モデル分子群」を作製,単一分子物性計測グループに供給し,次期モデ ル分子群の設計戦略についてフィードバックを受けている。今年度の成果は,①絶縁被覆付きチオフェンオリゴマー の 288 量体までの合成・単離に成功した。そのパイ共役主鎖長は 110 nm である。これにより,重合法に頼らず逐次 合成法のみで,パイ共役分子のサイズをトップダウン型微細加工技術が容易に適用可能なサイズ領域(> 100 nm) にまで拡張可能なことを初めて例証した。②共同研究として(阪大・多田/山田G),各種ブレイクジャンクション 法により単一分子鎖の伝導機構の鎖長依存性について系統的に検討した。分子架橋長を(前回は 1–8 nm)を 10 nm まで拡張して行ったところ,トンネル伝導からホッピング伝導への遷移が約 7nm 長で起こることを示す知見を得た。 伝導機構をより詳細に解析するため,伝導度の温度変化につて検討中である。③京大・田中Gには,分子パーツと して 1–12nm 長級の汎用構築ブロック群を供給した。京大Gにて発光性分子ユニットとの接合を試みた結果,5nm 長級までの発光ユニット含有オリゴマーの合成に成功した。現在,その 20nm 長級のものについて合成が進行中であ る。④京大・松重/山田Gには,平坦化ナノギャップ電極上における大型分子の電場配向技術の開拓用に,本年度 は 20nm 長級のアンカーポイント付き被覆型オリゴチオフェンを供給した。

b) 10–100nm 長の非周期的・定序配列型の巨大パイ共役分子を,物性計測ステージの定位置に,正しい配向・配座で 設置する技術を確立することは,真当な計測実験を実施するための前提条件である。そのため,分子主鎖に非周期 的な凸凹を意図的に導入し,「鍵と鍵穴原理」にて,基板表面上で適材分子が適所に自発的に定序配列化する方法論 の開拓を行っている。今年度は,側鎖アルキル鎖の導入により,長方形,及びオフセット付き長方形に形状制御した チオフェン六量体分子群について,銀 (110) 基板上での配列様式を高分解能 S T M 観測により検討した(横浜市大・ 横山Gとの共同研究)。結果,分子形状の長方形からのズレの程度(オフセット比)に応じて,分子集合形態に系統 的な変化が生じることが分かった。より大型な分子において凸凹形態制御を行った場合について,現在検討中である。

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234 研究領域の現状 B -1) 学術論文

R. YAMADA, H. KUMAZAWA, T. NOUTOSHI, S. TANAKA and H. TADA, “Electrical Conductance of Oligothiophene Molecular Wires,” Nano Lett. 8, 1237–1240 (2008).

F. NISHIYAMA, K. OGAWA, S. TANAKA and T. YOKOYAMA, “Direct Conformational Analysis of a 10 nm Long Oligothiophene Wire,” J. Phys. Chem. B 112, 5272–5275 (2008).

T. YOKOYAMA, S. KURATA and S. TANAKA, “Isomeric Discriminating and Indiscriminating Assembly of Adsorbed Oligothiophenes on Ag(110),” J. Phys. Chem. C 112, 12590–12593 (2008).

B -7) 学会および社会的活動 学会の組織委員等

分子研分子物質開発研究センター・特別シンポジウム「分子スケールエレクトロニクスにおける新規分子物質開発」主催 者 (1998).

応用物理学会・日本化学会合同シンポジウム「21世紀の分子エレクトロニクス研究の展望と課題—分子設計・合成・ デバイスからコンピュータへ—」日本化学会側準備・運営担当 (2000).

第12回日本MRS学術シンポジウム:セッション H「単一電子デバイス・マテリアルの開発最前線〜分子系・ナノ固体系 の単一電子デバイス〜」共同チェア (2000).

F irst International C onference on Molecular E lectronics and Bioelectronics 組織委員 (2001).

B -10) 競争的資金

基盤研究 (C ), 「高度の電子輸送能を有するナノスケール単一分子電線の創出」, 田中彰治 (1998年 –1999年 ).

基盤研究 ( C ) , 「シリコンナノテクノロジーとの融合を目指した機能集積型巨大パイ共役分子の開発」, 田中彰治 (2000 年 –2001 年 ).

基盤研究 (C ), 「単一分子内多重トンネル接合系の精密構築法の開拓」, 田中彰治 (2007年 –2008年 ).

C ) 研究活動の課題と展望

かつては,「もっとデカイ分子をつくれよ〜」とのプレッシャーが単一分子物性研究軍団からきていたが,現在は状況が反転。「1 –100nm 長のパイ共役主鎖中のお望みの位置に,ポテンシャル井戸・障壁,光活性部,プロトン・金属配位部なんかを導入 できるけど,どないでっか?」と攻めるフェーズとなっている。重合法では構築不可な非周期的・定序配列型の巨大パイ共役 分子の精密合成の進展は,① Ni や Pd 触媒によるパイ共役系間の精密カップリング技術,② MA L DI-T OF Mass による巨大 分子の迅速構造決定技術の賜物であり,いずれも本邦発の必殺技である。この地場ネタで世界をブッチギる… … はずであっ たが,思わぬ障害に直面した。分子物性研究分野に「規格外の巨大分子」を取り扱うノウハウの蓄積が無いことである。各 業界の「典型分子(大抵は,市販分子)」とやらに“ 徹底的” に特化してしまった分子計測技術は,無差別級の闘いでは対応力 不足である。計測研究の若手レスラーには,未知の強豪分子とデスマッチで闘えるよう「腕白でもいい,逞しく育って欲しい」 ものである。一方,分子開発業界においては「規格外の巨大分子」を必死のパッチで多段階合成するという気風が失われて きた。ウチの技術を移転する先が無いではないか。困った。

参照

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